2021/05/12 01:21
コロナで文化行事がずっと禁止になっていてやっと少しずつできるようになり、主催者であるホテル・ハンマー(ルツェルンの近郊にある保養地)から直前にコンサートのオファーをいただきました。
母の日になる前夜で、母の日にちなんだ春のカラフルなプログラムをお届けしようと考えました。
そこで、半分はピアノの曲にして、残りは、8年前にやったグリーグのプログラムがよく合うと思い、ノルウェーの歌手ウッラ・ヴェストヴィークに共演を尋ねたら、なんとかいけそうです!と返事をもらいました。コンサートの4日前でした。
グリークの傑作の歌曲チクルス「山の娘、ハウグトゥッサ」は、ガールボルクの詩とグリーグの音楽が理想的に融合されていて、これほどグリーグで美しく素晴らしい歌はないといえます。「山の娘、ハウグトゥッサ」は、普通の人間ではなく、見えないものが見えたり感じたりできる能力をもっている少女で、山で、羊や牛を飼い、山で出会う熊や狐、狼などとも会話をし、自然の中で、元気いっぱいに生きています。そんな彼女も、可愛い男の子との出会いがあったらと恋を待ちわびていました。そんなところ、ユンという男の子に出会い、恋をします。デートは自然のなかで、とってもロマンチックです。そして夕焼けの中キスをし、雰囲気満々です。恋は、愛となり、彼女は彼を信用します。この愛は、籠の中の鳥のようにとらえられた存在が歌詞の中ででてきます。しかしユンは、彼女を裏切り、彼女は絶望の淵におちいり、死んでしまいます。死んでしまうさまが、死んでしまう鳥の様子で描かれ胸をえぐられます。
最後の曲「山の小川」では、まるでシューベルトの「小川の子守歌」のように、小川のせせらぎとともに、彼女の恋の喜び、痛みが回顧となりうたわれます。さらさら流れる小川と彼女の強い内面の愛が静かに強くあらわれ、音楽としてのインテンシブな瞬間は、弾きながら鳥肌がたちます。
コンサートは、大成功で、ウッラとの久々の共演を大変楽しめました。心からの作品は、とても幸せなひと時にさせてくれました。
間際のオファーは、準備が急で、かなりタフですが、本当にやってよかったです。コロナでコンサートができなかったぶん、お客様や主催者のかたにとってもいいエネルギーをいただきました。
こんな機会をありがとうございます。
帰りの夕日がまた綺麗でした。