2022/05/13 01:43

5人の男性歌手(テノール3人、バリトン1人、バス1人)とピアノの編成という豪華なリーダーアーベントがシュツットガルトであり、そのライヴ録音をドイツのラジオ局が公開しています。

ピアニストのマルクス・ハドゥラ(ウィーン音大リート科教授)がプログラムのコンセプトを作り上げ、ウィーンで活躍する旬の男性歌手5人を起用したすごい内容の濃いリーダーアーベントで、私は、ただただ聞き入ってしまいました!!

リーダーアーベントは、出来上がった台本で話を作り上げていくオペラとは違い、自分で、曲を集め、話の構成、展開を自分で演出できます。それの醍醐味を感じた、シューベルトの歌曲プログラムでした。
どんなプログラムであるかというと、光と影が行き交う歌曲が重唱、ソロから成っています。シューベルトの夜の歌曲の多くは、暗いどすんとした夜の歌ではなく、明るい月の光の元、月を信頼する付き人としてさすらう主人公の歌など、夜の特別な明るさに焦点をあてた歌曲が多くあります。ドイツ語で言うと、夜にmunter (快活に)、『さすらい人が月に寄せて』をはじめ、傑作の「夜歌」などがありましたが、アカペラ5重唱『墓と月』は圧巻でした。青銀の光を放つ月に向かって話しかける主人公、墓の中は暗闇か、光か? 鳥肌がたつ素晴らしいアンサンブルでした。ハーモニーの作り方が美しく、内声の不協和音にかなめになる音の保ち方、解決に導かれる上声部の完璧なイントネーションでした。
後半になっていくと、シューベルトのテーマである故郷探しに焦点があてられ、死への憧れが強く表現される歌が連なります。
『墓のいる死人の望郷』とあるよう、死人が死へに焦燥するという、安らぎのないシチュエーションは、最後に浄化され、長調になって終わります。この曲は、全プログラムの中でも圧巻の演奏でした。
最後は『セレナーデ」で元々は、アルト・ソロと男性合唱のところをバリトン・ソロと男声合唱でユーモアをもって終わっていました。

ピアニストのマルクス・ハドゥラさんは、ヘル先生門下の先輩で、とても温かい人柄の同僚です。私のリートセミナー『クララとヨハネスの歌曲』講座で朗読をしてくださっている黒澤りさこさんの旦那様です。講座の中でもブラームスのフェリックス・シューマン詩の『私の恋は緑』で、彼が朗読してくださっています。彼が長く温めていたコンセプトだそうで、テノール1がかなり難しく、皆で時間を合わせるのも、主催者が費用をだすかも結構大変なプログラムだったとラジオのなかでもアナウンサーが言っていました。
来年は、ウィーンで同じプログラムが上演されるそうです。

私はすごいリーダーアーベントを聞いて心から感動しました。ラジオの録音技術も素晴らしいです。歌詞が鮮明で、響きは耳にとても心地よい、ベーゼンドルファーの鮮明なキャラクターもとてもでていました。
どうぞ皆さんもお楽しみください!!

https://www.swr.de/swr2/musik-klassik/nachthelle-schubert-hoch-fuenf-102.html