2024/01/23 17:49
11月半ばから年末まで、オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」とオペレッタ「シカゴの伯爵夫人」のプロダクションを同期間、従事しました。オペラの依頼は、3年に1回の東スイス音楽シアター・ヴィルからで、オペレッタの方は、昨年から働き出した市立スールゼー劇場の依頼です。市立スールゼー劇場からは、携われる時間が限られた中でも、シェフ・コレペティトーアを依頼してくださいました。😌
プロダクションの練習は、顔合わせをし、演出家の意思表明や、解釈など話したり、自己紹介を公開で行います。そして引き続き、セリフの練習をひとまず終えると、まず音楽のリハーサルをソリストたちが、指揮者とやります。コレペティは、それに立ち会います。
解釈や表現の意図、テンポなどを指示して、時には、意見も交換して、音楽の方向を決めていきます。
それが固まったらいよいよ舞台で、演出家とのリハーサルに入ります。この際、指揮者がいない場合もあり、音楽的な責任は、コレペティに任されます。
舞台練習では、セリフと動きを音楽と共に、何回も練習するものですが、動きの中で表現の深さを出すため解釈の根本も探っていくので、話し合いや、せりふだけの練習もやります。セリフのリズムや重きの場所など演出家が指導していきます。
スールゼー市立劇場、演出家ジュゼッペ・スピーナと歌手たち。リハーサル風景。
😕オペラとオペレッタの違いは何でしょう?🙃
スイスのある有名な歌手が、答えています。オペラは、死がいつも登場し、オペレッタは、ハッピーエンドで終わるということです。オペラは歌がメインですが、オペレッタでは、セリフもかなり多く、芝居もうまく、歌手は、踊りもできないといけません。オペラアリアのようなろうろうと歌うより、たくさんの歌詞を覚え、音域も広範囲で歌えないといけないので、実は、結構難しいものです。
オペレッタ「シカゴの伯爵夫人」市立スールゼー劇場。真ん中は主役のマリー役、テレーザ・コットラノーヴァ。
私が携わった二つの演目、カルマン作曲のオペレッタ「シカゴの伯爵夫人」は、典型的な、ハッピーエンドで、話の内容は、古い伝統ヨーロッパ 対 新アメリカでウィーンワルツとジャズの音楽でコメディが展開されます。
私は、前回お仕事をさせていただいた、これまた東スイスのシールナッハ市のオペレッタ「白馬亭にて」くらいしかオペレッタとは、あまり縁がなかったのですが、同じ演出家に誘われて、お仕事をいただきました。彼のお仕事の中で、きざみよく笑いをもたらすコメディの芸術を大変勉強させていただきました。
笑いに至るまでの緻密な準備と練習は、努力の賜物としかいいようがありません。アンサンブルの息を合わせるスピード感、速に対応できる能力が必要です。そして笑いの味噌となるところでの間の取り方。経験のある演出家の演目を積み上げていく様子をみました。
練習風景。コメディは努力の賜物!真ん中、歌手ステファン・ヴィラーのヴィルトゥオーぞのセリフの言い回しに圧巻!😁
さてオペレッタの方では、主席の指揮者が、他の仕事もあり、毎回これないので、アシスタントの指揮者が、リハーサルにつきあいます。そしてそのアシスタントも忙しく、なんともう一人アシスタントがサポートして、毎回違う指揮者とリハーサルを進めていきました。コーラスがからんだ場面は、絶対指揮がないと、ソリストのデュエットやソロとは違って練習がはかどりません。コーラスは、踊りも入るし、動き回るので、指揮者は、いつも同じ方向に、入りを出しても、動いていてしまって、歌手は前の場所で歌っていない場合があります。なので、演出をよく知っておかなくてはいけません!
アシスタントのアシスタントの指揮者サムエル・ニュッフェラーは、とても真摯で主席指揮者がふる練習に、よく来て、勉強していたし、コーラスとのリハーサルもよく指導できていました。前向きな性格で、働きやすい同僚です。
サムエル・ニュッフェラーと子供コーラス。オケピットから。
「カヴァレリア」の方をメインに仕事をしていた私は、教会指揮者で、優れた合唱指導のできるクルト・コラーさんと舞台稽古にほぼ立ち合いました。その合唱指揮というのが、くせものになってしまったのでした。
彼の合唱の指導は、大変よかったのですが、オケの指揮や、オペラの指揮でソリストを導いていく力は、彼には、全くありませんでした。
何回やっても合唱とソロとオケが合わない、いつもミスが残るリハーサルで、直すやりかたがみつけれず、
おかげで、また違う場所で、合わない場所がでてきて、つじつまをあわせようとして、ギクシャクする、論理のない指揮で、困りました。😨
逆に「伯爵夫人」の主席指揮者ハラルド・ジーゲルさんは、オペラ劇場でずっとやってこられた方で、経験が豊かで、歌手の呼吸を支え、自由なフレーズで歌わせることもできたし、オケと合わせるところは、どこで自由にさせるか、しないか、しっかり把握できていました。私は、その手腕に驚かされました。そして歌手の入りの歌詞を全部一緒に歌ってあげていました。ものすごい頭がクリアで、誰もが入りを安心して入れるリハーサルでした。なれてきたら、そこまでしなくていいのですが、初めは皆、心配で、曖昧なので、指揮者がはっきり示せるとリハーサルがどんどんはかどります。
ハラルドさんの指揮の振りは、誰がみてもどこの拍子なのか、理解でき、テンポやアイデアも明快で、はっきりついていくことができます。雲泥の差を経験しました。
スールゼー劇場で、3人の指揮者とお昼ご飯をご一緒し、話をしましたが、歌手に任せてはいけない、自由に歌えるようにみせても、実は、全部指揮者の手の中で転がせれるのが、良い指揮者だと皆さん語っていました。なので、絶対振りは、前だしでないといけないのです! 一緒に音楽をするのとは、違うのです!!
そしてそれができる指揮者のもとでは、難しいつなぎ目の箇所など、なんの心配もなく、音楽的に展開できるのです!!
そして指揮のテクニックがあっても、経験で学ぶことが、いかに大事か言っておられました。アシスタントの方は、やっぱりテクニックはあったけど、そこまで引っ張ってくれたり、受け取ってくれません。私は、指揮者の手腕の違いを痛感しました。
スールゼー市立劇場、首席指揮者ハラルド・ジーゲルとアシスタント、フランチェスコ・カグナッソ。
普段だとコレペティの仕事は、ピアノとの通し稽古が終わると、オケにバトンタッチですが、私は引き続きオケでも弾かせてもらいました。カルマン作曲のこのオペレッタは、彼が新しい音を求めて、従来のオーケストラにはなかったピアノをいれ、フォックスの和音やリズムをとりいれています。なので、なので、初演にもオケピアノとして一緒に初演を経験できました。
そしてその素晴らしい主席指揮者ハラルドさん、初演は、さすがでした。😲
初演は、皆、ここまで来れたという感無量の嬉しさと緊張で、かなりそわそわしています。
ソリスト7名、コーラス、バレーダンサーかなりの人が舞台にいて、そしてオケピット、結構な人です。そのみんなのそわそわのエネルギーをまとめて音楽を引っ張っていくには、指揮者なのです!!
何がさすがたっというかと、すごい冷静!!クール。振り方が小振り。ゲネと違ってもっと小振り。彼の冷静な指揮には、かなり助けられました。上手な指揮者は、助けれる器量がある!ということです。
指揮は、入りも大事、終わりのフレーズの締めも大事。そして身振りひとつで、奏者に影響をものすごく与えるので、卓越していないとだめなのを身を持って感じました。皆と同じレベルではいけないのです!!
初演の際に演出家のジュゼッペ・スピーナがプレゼントしてくれた薔薇と手書きのカード。裏方の私にも心配りができる彼の気持ちに熱くなりました。オケピットの中で。
🥰オケの中で弾けるというのは、ピアニストにとって大変貴重なものです。オケのサウンドを聴く、合わせる、通奏低音どうしを合わせる、打楽器との絡みや支え、メロディー楽器との対話、そういういろんなサウンドに対応できる素晴らしい機会なのです!!
私は、オケで弾くのが大好きで、どんなオケであってもチャンスがあれば、のるようにしています。今回は、チェレスタとピアノを担当。ピアノは一人だし、モダンな曲には、ピアノは、リズム的な要素や流れるパッサージョを弾く場所に使われるのが多いです。
出るところは、突出して、抑えるところは抑えるにするのが、オペレッタ、歌手を伴奏する箇所で大事です。
☘️今回は、あまりにも質の違った指揮者に出会い、手腕をみせてもらいました。そして、基本の基本で、大事なのは、人の目をみるということです。🍀
合図する場所は、指揮者は、アンプしておき、その奏者とアイコンタクトがとれなくては、奏者はついてこれません。
それが、室内楽との大きな違いです。
人間なので、人の目をみるというのは、大事なのです!!
それは、他で弾かせてもらったときにも、同僚がいっていたものでした。次何の楽器が来るか、目で合図を送る。🤗
この1ヶ月半で指揮の勉強をかなりさせてもらいました。はっきりいって指揮はまったく興味がなかったのですが、ハラルドさんの上手い指揮、歌手が自然に歌える素晴らしい指揮にであって、ものすごく興味がわきました。
彼には大感謝です。🙏
来年も一緒に是非にと言っていただいたし、長い付き合いでお仕事できたらいいなあと言っていただきました。ピアニスト冥利につきます!!☺️
ヴィール市トーンハレ。とても良い音響です。